【要約】リチャード・E・エヴァンズ『第三帝国の歴史 第一巻——第三帝国の到来(上)』
リチャード・E・エヴァンズ『第三帝国の歴史 第一巻——第三帝国の到来(上)』(監)大木 毅 (訳)山本 孝二(2018、白水社)
本書は、ビスマルク以降のドイツの歴史を幅広い視点から大ボリュームで論じた『第三帝国の歴史』の第一巻である。しばしば議論に上がる「なぜドイツはナチズムを生んだのか」という問題は、単線的な歴史解釈や本質主義的なドイツ解釈では十分に理解できない。同様に、ナチズムの勃興を同時代のヨーロッパ独裁制の中で生じたと考える解釈も、ほかでもないドイツでナチズムが生まれたことを説明しない。エヴァンズは、ナチズムが本質的にドイツ独自のものであった政治的・イデオロギー的な伝統と発展から成功を引き出したことを否定しない。他方で、ナチズムの勃興はあらかじめ決められた結末ではなく、そこに至るまでのプロセスは様々な方向への紆余曲折を経ての帰結であった、と主張する。ゆえに、本書では、ドイツ史の記述をビスマルクから開始し、以降の複雑な歴史プロセスを辿っていくのである。
続きを読む
<第二回>ベルクソン『意識に直接与えられたものについての試論』を読む
第二回は、第二章(意識的諸状態の多様性について——持続の観念)を読み進めたいと思います。
第二章に入る前に、第一章の振り返りの意も込めて、本章で用いられる概念について少し説明を加えておきましょう(第一章から出てきている概念ではあるのですが、わかりやすさの観点から第一章時点では触れませんでした)。とはいっても、第一章で執拗に繰り返された「質」と「量」の話が分かっていれば特に難しいことはありません。
続きを読む